e-Learning システムの利用状況と今後の展望

e-Learning システムの利用状況と今後の展望 2011

この冊子は、前年度末に刊行された大学の冊子です。前年度(2012)に刊行しているのに、2011という西暦があるのは、対象としている内容を収集してまとめるための編集方針などによって、時間がかかっているからでしょう。ただそうはいっても、やや旬は過ぎている感は否めません。『FD Review vol.7』は、該当年度の教員の授業・教育の活動報告が中心となってまとめられています。私は、その年度に所属していた部署の業務に関わって原稿を書きました。

e-Learningシステムの利用状況と今後の展望

                         教育研究連携調査課

                         課長 太田貴久男

はじめに

 

 平成24年度からの事務機構改革により、e-Learningの担当事務部署が変わる。これまでe-Learningは、教育研究連携推進センター事務部教育研究連携調査課が担当していたが、今後は、教育推進部の教育推進課が事務所管となる。e-Learningの利用、また支援・サポート業務が無くなるわけではないが、事業の一つの区切りとして、ここ数年のe-Learningの動向について、利用者数等の資料を参考としつつ概観したい。併せて平成23年度に実施した利用者アンケートの結果報告を示すこととする。

 

本学におけるe-Learningシステムの導入

 

 本学において、本格的にe-Learningシステムが導入されたのは、平成17年度(2005年)からである。それ以前にも平成14年頃に数年間、l-suport(エル・サポート)というシステムが利用されていたが、定着するには至らなかった。平成17年度、教授法開発室(当時)と情報システムセンターが連携して、新たなe-Learningのシステムが開発された。   Xoops(ズープス)というオープンソースをベースに、本学独自でコンテンツのプログラムやメニュー画面の仕様をカスタマイズしたe-Learningシステムである。当年度の秋学期より運用が開始され、教員6名(12科目)、受講学生は533名(のべ人数)という規模であった。その後、平成19年度に事務機構が一部変更され、e-Learningの業務は、新しく設置された教育研究連携推進部のメディア教材開発・知財課(当時)が受け継ぐこととなった。開発当初に関わった情報システムセンターや教育開発課は、その時点でe-Learningの業務から、少し距離を置く形となった。業務が移管された理由は、e-Learningが使われていた通学課程のシステム(e-Learningと講義を併用したブレンド型と呼ばれるもの)と、同時期に開発されていた通信教育課程のメディア履修科目でのコンテンツ作成と履修システム(遠隔教育の履修方法として単位化されたシステム:広義のe-Learningといえる)について、教育と研究連携の観点から、共同の開発、システムの融合等が目指されていたことによる。ただし、それ以降、両者のシステム共用化、融合等には至っていない。

 

e-Learningの運用と新たなシステム

 

 平成19年度以降、メディア教材開発・知財課により、利用手引き書の配付や教員への個別の働きかけが功を奏して、その翌年となる平成20年春学期のe-Learning利用者数は、教員32名(68科目)、受講生延べ2234名と、前年度秋学期の数値に比較して倍増した。ただし利用している教員が30名前後、という数値は、それ以降も、毎学期ともに変動せず、利用教員が固定化しつつあったことを伺わせた。利用教員が増加しないことについて、運用しているシステムを使うのには、ある程度のパソコンの操作技術、情報処理能力を必要とすること、また「難しいのではないか」という先入観を持たれやすいこと、担当科目でのe-Learningの活用方策が見つからないこと、等の理由が考えられるが、平成19年度に事務担当がメディア教材開発・知財課に移管され、教授法の開発や教員の資質向上を図るFD関連の事務組織との連携が希薄になったことも、その一因と思われる。

 平成20年度には、以上の状況を踏まえてe-Learningのシステムを見直し、新たなシステムを検討することとなった。手始めに、全国の大学でも多く利用されているmoodle(ムードル)というオープンソースのプログラムについて翌年度(平成21年度)中に検討することとなった。また同時に私立大学情報教育協会や情報関連団体の主催する大会、研究会に参加するとともに、他大学の動向や、新たなe-Learningシステムの情報収集を積極的に行なった。そのような中から、朝日ネットの提供するmanaba course(マナバ・コース)が検討されることとなった。平成21年度秋学期からは、試験的に実際の講義に使い、その機能、使い勝手などを検証した。一部の教員からは、やや物足りないとの意見はあったものの、大半の利用教員からの意見としては、分かりやすい、使いやすい、動作が速い等の高評価があった。また既に導入している大学での利用実態について、その大学を訪問し聞き取り調査をした結果、高い評価があることが分かった。それらを取りまとめ、メディア教材開発・知的財産管理委員会に諮り、事業計画が認められ、翌年度からの利用に至った。

 平成22年度より、新たなシステムとなることより、前年度末と年度始めの2回、朝日ネットの担当者による講習会を開催し、その普及に努めた。また従前のシステム(Xoops)についても移行期間として利用することは可能とした。結果として、同年度春学期、教員50名(123科目)、受講生延べ4582名と、システム移行の初年度にもかかわらず、利用数は倍増した。新しいシステムに対する関心の高さがうかがえる結果であるが、この数値には、これまで積極的にシステムを紹介していなかった非常勤教員の新規登録者数が含まれている。この動きは、本学の教員から、関連講義を担当する非常勤教員にe-Learningの利用を勧めたことにもよるが、それ以上に、非常勤教員自身から、このようなシステムを積極的に利用したいと申し出てきた結果である。研究室を持たず、大学へは週に1回程度、といった状況下にいる非常勤教員にとって、教育機会の充実といった利点に着目し、e-Learningの利用が増加したことは評価できる。また学生にとっても、インターネットを介してではあるが、講義に関する質問やさまざまなアプローチが可能となっていることは大きなメリットとなった。e-Learningの機能を使えば、講義で使用する為の資料やデータを、事前に受講学生に提示することが可能となり、印刷資料を当日配付して講義に臨んでいたこれまでの手法に比べ、教育効果・コスト削減にも貢献するシステムである。平成23年度春学期のe-Learning利用数は、教員79名(149科目)、受講生のべ7174名である。e-Learningが運用開始された6年前と比較して、10倍を超える数値に成長したのである。

 

アンケート結果の傾向

 

 2010年度と同様の結果データを掲載している。アンケートの回答者は、学期(春学期と秋学期)ごと、科目ごとの登録学生である。したがって回答人数は、それぞれの項目ともに、のべ人数となっている。ここでは、その結果をもとにe-Learningの活用状況と傾向について、前年度の結果などと比較して記述する。過年度のアンケート結果の詳細については、各年度の『FD Review』を参照されたい。

1)e-Learningを活用している回生

 e-Learningを活用している授業は、2回生が受講している科目に多い結果が出ている。前年度も同じ傾向である。

2)1回の授業の予習復習の時間

 両学期ともに、1科目あたりの予習復習時間が30分未満である学生が50パーセントを超えている。2009年度は41パーセント、2010年度は50パーセント、2011年度は55パーセント(それぞれ春学期と秋学期の平均)と、増加傾向にあることが憂慮される。回答率などの条件の影響も考えられるが、e-Learningの利用者だけの傾向なのか、学生全般に言える傾向なのか、全学的な調査も必要であろう。

3)自宅のインターネット環境の有無

 90パーセント程度の学生が自宅にインターネット環境を有している。これは昨年度から変動のない傾向である。

4)e-Learningを行う場所

 自宅とサンサーラでe-Learningを行っていることが多く、これも前年度並みの数値となっている。現在、大学キャンパス内での無線LAN環境が整いつつあるが、学生のノートパソコンやタブレットPCなどの利用が増えれば、教室での数値も上るだろう。

5)e-Learningの学習効果

 選択肢が限られているので、実態に即した結果となっているか不明だが、「講義資料が入手しやすい」「授業の予習ができる」「授業時間外に学習ができる」といった項目が高いポイントをあげている事は、e-Learningのメリットとして学生自身も認識していることを物語っている。併せて後掲の自由記述の内容を参照することで、e-Learningを活用することの学習効果を、さらに質の高いものとすることができるだろう。

6)自由記述について

 好意的なコメントの中に、何らかの事情により講義を受けられなかった学生が、e-Learningを利用して学習し、講義内容を把握できたという長所を挙げている。本学の通学課程ではe-Learningと対面授業を併用したブレンド型で運用しているが、教育実習期間などやむを得ない理由で授業を欠席する学生への教育機会の保証が、部分的であっても可能であることを示す興味深いコメントである。また受講生が班ごとに分かれて意見交換などを行っているというコメントがあるが、おそらく掲示板(スレッド)の機能を使って運用していると思われる。限られたメニュー(機能)であっても、工夫次第で教育効果が上るという好例である。

 一方、否定的なコメントとしては、e-Learningを使うための学生側の技術的なスキルの差、あるいは過度な利用者に対する批判、といったマイナス面を指摘するコメントが目立った。また学内のインターネット環境の未整備や教員側の準備不足などを挙げるコメントもあった。

 最後に、要望の中には、学生の認識不足と思われるコメントもあるが、前述した大学内でのインターネット環境の整備を挙げるコメントが目立つ。さらに現行のe-Learningの機能に新たな機能を追加すればよいのではというコメントがあり、これらのコメント(要望)に対しては、大学をあげて改善していく姿勢が望まれる。

 

e-Learningの新たな展開に向けた契機に

 

 平成23年度までは、e-Learningについて教育研究連携推進センター事務部の教育研究連携調査課が担当していた。教育研究連携推進センターの目的は「佛教大学教育研究連携推進センター規程(平成23年3月31日廃止)」によれば、「本学における教育,研究,地域等との連携,メディア教材開発ならびに知的財産関連事業等を推進し,もって社会の要請に応えると共に,本学に対する社会的評価の向上に寄与すること」となっていた。この目的に沿ったセンター事業を具体的に推進する事務部門の中に、教育研究連携調査課(旧・メディア教材開発・知財課)があった。その課が、講義支援のツールであるe-Learningのシステムを担当していた根拠は、条文の中にある「教育」と「メディア教材開発」の部分であると解釈出来る。しかしながら、教育研究連携推進センターが取り組むべき包括的な事業である地域連携、産学官連携、研究推進、外部資金獲得といった事項と、個別の教員の講義運営を支援するシステムであるe-Learningが、教育的に連携して推進されることは考えにくい状況であった。

 平成24年度から事務機構改革により、e-Learningの支援業務が、教育推進部の教育推進課に移行される。文字通り、個々の教員の講義、教育を支援し推進していく部署に落ち着いたといえる。近年、情報通信技術の急速な進展に伴い、効果的な教育の必要性が高まっている。その一つのシステムがe-Learningといえる。本学におけるe-Learningが、さらに進展・拡充し、教育の質を高めるツールとなることを期待する。

                                    以上

 

Starting of travel

▼駅のページ 旅の始まり

JR嵯峨野線の駅 他
JR嵯峨野線の駅 他

私への個別メッセージ

こちらへどうぞ

↑公開されません

直接E-mailで届きます。
他の方にも公開してもよい内容なら↓掲示板へ。

ホーム へ戻る