絵画や写真の著作権について

 既に著作権が無くなった絵画や写真については、著作権者に断りなく利用できます(「著作権法」第51条に、著作物の保護期間は、著作者の死後50年と定められていて、以降については、その著作物は、パブリックドメイン:公共財産となります)。ところが、ここで誤解が多い言葉に「版権」というものがあります。著作権について、ある程度知識のある方は、この言葉が、著作権の古称(古い呼び名)ということを理解している人もいますが、一般的な人の語感としては、出版権、出版物の版面の権利、といった意味合いとして理解されるのではないでしょうか。つまり、著作権の切れた写真でも、新たに雑誌などに印刷され掲載された写真は、その出版社に権利があって、無断では利用できないのではないか、と思ってしまいます(ただし複数の写真や文章を新たに紙面にレイアウトしたもの、その紙面全体には、出版社など編集した人による著作物性が認められます)。これとは別に出版権というものがあって、話がとてもややこしいのですが、ここでは出版権とは直接関係ないので省略します。

 さて、このように誤解する理由には、音楽の著作権の扱いと混同してしまうからだと思います。音楽には、その曲を作詞作曲した著作者の他に、その曲を歌った歌手、その音源をレコード等に編集して固定した会社(ミキサーやプロデューサー)の著作隣接権というものがあるからです。この権利が、もし書物にあるのであれば、作家などの著作物を創作したした人の著作権に「隣接」する形で、出版社、印刷会社などにも著作隣接権が生じる、ということになるのですが、残念ながら出版物に著作隣接権はありません。

 したがって、インターネットや雑誌、出版物に掲載された著作物(著作権の切れた絵画や写真・絵葉書等)を映した写真は、利用者がコピーするなり、スキャンして使うことが出来るのです。これは、その著作物が平面的であることより、当該著作物をどんなプロのカメラマンが撮ろうと、アマチュアが撮ろうと、結果として、そう変わるものではない、という観点から判断されているのです。

 つまり著作権が切れたものを撮影した場合、普通は、それを撮影した人に、その写真の著作権が生じているはずですが「平面的なもの」については、撮影しようと、コピー、スキャンしようと、大きな差が出ることはなく、著作性が無い、という判断があるのです。

 ただし、立体的なものを撮影した場合については、やはりカメラマンにより、角度や光の具合などに創作的な面が出ることより、そのものに著作物性がある、著作権が発生している、ということになるのです。

 平面的な写真には著作権がない、という点についての判例があります。「顔真卿自書建中告身帖事件」という、漢字ばかりが並んだ難しそうな判例に思えますが、構図としては、至極簡単です。以下にご紹介しましょう。


顔真卿自書建中告身帖(がんしんけいじしょけんちゅうこくしんちょう)事件とは、唐代の書家顔真卿の真蹟(しんせき:その人が確実に書いた書画)である「顔真卿自書建中告身帖 ※」を所有する博物館(財団法人)が、現所有者である博物館に無断でこの告身帖を複製して出版した出版社に対して、所有権(使用収益権)の侵害を理由に出版物の販売差止とその廃棄を求めた民事訴訟事件。

<事件の概要>

A:前所有者(撮影許諾をBに与えた)

B:写真撮影者(撮影許諾をAから与えられた)

C:現所有者(博物館)

※「顔真卿自書建中告身帖」とは、唐代の書家顔真卿が建中元年に自書した辞令を指し、極めて貴重とされている書である。
 顔真卿自書建中告身帖の前所有者であるAは、昭和初期にBに複製物の制作・頒布を許可していた。その後、CはAから承継取得した。出版社は昭和43年にBの承継人から写真乾板を譲り受け、それを用いて昭和55年8月30日、和漢墨宝選集第二四巻『顔真卿楷書と王?臨書』(本件出版物)を出版した。出版社はBの承継人から写真乾板の所有権を適法に取得、自書告身帖を複製・出版していた。しかし、C側は自書告身帖に対する所有権を主張。C側の許可なく行われたものなので、所有権(使用収益権)を侵害するとして、出版社側に販売差止と当該出版物の破棄を要求した。<判決>最高裁は、美術の著作物の原作品は、それ自体は有体物であるが、所有権は有体物をその客体とする権利であるので、美術の著作物である原作品に対する所有権は、その有体物に対する排他的なものにとどまり、無体物である美術の著作物自体には排他的支配は及ばないので、所有権に基づいて出版物の販売差止はできないと判示し、博物館側の上告を棄却した。つまり、有体物に対する支配権である所有は民法上の権利であり、有体物としての側面を排他的に支配しうるが、無体物としての側面を支配する権利は知的財産権であるということを述べたのである。また、著作権の消滅後は、所有権者に複製権などが復帰するわけではなく、著作物はパブリックドメインに属する。そのため、著作者の人格権を侵さない限り、自由にこれを利用できるのである、とも判示している。

 

 


つまり、著作権の切れた作品を「所有」しているからといって、その作品を映した写真を独占的に利用する権利はない、他者がこの写真を使うことを止める権利はない、ということなのです。

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