屋外に設置された美術作品の写真掲載については、以下のような点を根拠としております。
「著作権法」の第46条には、屋外に設置された美術品、建物(著作物としての建物=芸術的価値のあるもの)について、権利者(著作権者)の了解を得ることなく「例外的な無断利用」ができることが書かれています(ただし販売目的で利用することなどを除くことが条件になります)。簡単に言えば、一般公衆の見やすい屋外の場所に「恒常的に」設置されている美術品や建築物を、デジタルカメラなどで撮影することが出来る、そしてそれを自由に利用が出来る、という意味です。
平成22年の7月下旬、私は、大学の出張で東京で仕事がありました。場所は、渋谷道玄坂にある貸ビルでした。そしてこの写真は、東京渋谷マークシティ、井の頭線渋谷駅とJR渋谷駅を結ぶ連絡通路に設置されている岡本太郎作、巨大壁画「明日への神話」です。ちょうど仕事があった会場への道すがら見ることができるものでしたので、数枚デジタルカメラで撮影しました。
もしこの作品が、もう少し小さなもので、美術館などに展示してあるものなら、勝手に撮影することは出来ません。しかし「屋外に」「恒常的に」設置されている美術品であることによって、このように、自分のデジカメで撮影して、そして何人かの人に配布して、見てもらっても構わない、ということなのです。連絡通路は屋内だ、という意見もあるかと思いますが、そこは法律の趣旨からすれば屋外と同等の扱いとしてよろしいと思います。
以上のことにより、以下の著作物についても、権利者に気がねなく自由に撮影することが出来ます(実際問題として、そこに集まった人たちは、著作権のことを意識することなく、それを背景にして記念撮影したりしていますが)。
水木しげるロードの彫像(鳥取県境港市)
ウルトラマン商店街の看板等(東京都世田谷区)
実物大ガンダム(お台場→東静岡駅前→お台場)
実物大の鉄人28号(神戸市長田区)
太陽の塔(大阪府吹田市)
巨大写真看板鬼太郎列車(JR境線)
サザエさんバス(東京都)
ポケモンジェット(ANA航空機のペイント)
この例の中でも、例えば「鬼太郎列車」や「サザエさんバス」「ポケモンジェット機」は、常に屋外にあるのか(夜間は倉庫に入る?)と思えるし、また「恒常的な設置」にしては、人を乗せて移動するものであり設置ではないように思えるし、厳密に言えば疑問の残るところです。しかし平成13年7月25日東京地裁判決「はたらくじどうしゃ事件」では、横浜市を走る路線バスの車体に書かれたイラストを「美術の著作物で恒常的に屋外に設置されたもの」に該当するとしました。このことにより「ポケモンジェット」や「鬼太郎列車」も同じ扱いになると想定されるわけです。